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瘦せの大食いとは言うけれど……
バイキングのお店の対応にショック

摂食障害になった女性たちとの30年余りの交流の軌跡が話題に!

 もっとも、そういう但し書きがない場合、その店がどれくらい敬遠しているのかはわかりません。また、店によっては、

「何度もトイレに行かれていますが、体調がよろしくないのですか」「ずいぶんお召し上がりのようで、料理人も喜んでおります」

 といった声をかけてくる場合も。これが本当に「心配」や「感謝」かどうかの判別も難しいものです。「嫌味」だとしか受け取れず、その店に行けなくなる瘦せ姫も少なくありません。

 とはいえ、店側にすれば、大食いすぎる客を敬遠するのも致し方ないことでしょう。たとえば、相撲の聖地である両国界隈では力士お断りという店もありますし、強豪相撲部のある大学のそばで焼き肉の食べ放題を始めたためにすぐ閉店に追い込まれたという話も聞きます。

 力士や相撲部員のケースと似ているのは、排出型の瘦せ姫も見た目でわかりやすかったり、疑われやすいこと。しかも、テレビなどの影響で、過食嘔吐のことは以前より知られるようになってきました。驚くほど細い女性が驚くほど食べていたり、トイレに何度も行っていれば、店からマークされてしまうわけです。

 そういう意味で、バイキングを安全に楽しむにはそれなりの注意が必要でしょう。体型がわかりにくい服を着るとか、同じ店に続けて行かないとか、食べる量もトイレに行く頻度も控えめにするとか……。実際、途中で吐きたい気持ちを我慢して、店を出てから、かなり離れた場所にあるトイレで吐くようにしている瘦せ姫もいたりします。

 覚えておきたいのは、経済的理由以外に、吐くことを前提にしているような食べ方自体がマナー違反だとされやすい現実です。食を存分に楽しめないのはつらいことですが、一定の慎みを持っておくことで、店側の印象も多少はよくできるのではと感じます。

 それにしても、瘦せ姫とは生きづらい存在です。今、マナー違反という言葉を使いましたが、じつはそれ以上のこと、すなわち法律に触れる行為に手を染めてしまうケースもありがちなのですから。そのひとつが、万引きです。

 たとえば、2013年に出版された『彼女たちはなぜ万引きがやめられないのか? 窃盗癖という病』(河村重実)(註1)という本は、この問題について書かれたものです。監修者は、摂食障害の治療でも知られる赤城高原ホスピタルの竹村道夫院長。第1章のタイトルは「窃盗癖と摂食障害」で、巻末には窃盗癖だけでなく、摂食障害のチェックリストや自助グループの案内も掲載されています。

 そんな本が書かれるほど、この問題は根深いともいえるのです。

(註1)『彼女たちはなぜ万引きがやめられないのか? 窃盗癖という病』河村重実/監修・竹村道夫(飛鳥新社)

(つづく……。)

 

【著者プロフィール】 

エフ=宝泉薫(えふ=ほうせん・かおる) 

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』などに執筆する。また健康雑誌『FYTTE』で女性のダイエット、摂食障害に関する企画、取材に取り組み、1995年に『ドキュメント摂食障害—明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版。2007年からSNSでの執筆も開始し、現在、ブログ『痩せ姫の光と影』(http://ameblo.jp/fuji507/)などを更新中。

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エフ=宝泉薫

エフ ほうせんかおる

1964年生まれ。主に芸能・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版。2007年からSNSでの執筆も開始し、現在、ブログ『痩せ姫の光と影』(http://ameblo.jp/fuji507/)などを更新中。2016年に『瘦せ姫 生きづらさの果てに』を出版し、話題となる。

 

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  • 2016.09.10